
マンションを売却する場合、うまくいくと利益が出ることがありますが、その場合には所定の税金を納める必要があります。もっとも、その計算方法は複雑で、ある程度の知識がないと税額を把握するのは容易ではありません。
そこで以下では、マンション売却時の税額の算出の仕方について、順を追って見ておくことにしましょう。
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マンション売却時にかかる税金とは
マンションを売却する場合に発生する代表的な税金は、譲渡所得税や住民税です。売却によって発生した利益は、個人の収入としてみなされるため、通常の給与などと同じように税金を納める必要があるのですが、給与所得のように源泉徴収されるものではないため、自分で税額を計算して確定申告することが必要となります。
そのため、計算方法が分からないからと言って放置していると、突然税務署から納税滞納のお知らせが届いて慌てふためくことになりかねません。そのようなことのないよう、マンション売却にあたって利益が出そうな場合には、あらかじめ税金についての十分な知識を備えておくことが重要であると言えるでしょう。
なお、厳密にいうと譲渡所得税には、短期譲渡所得税と長期譲渡所得税の二種類が存在します。この二つの違いは、マンションを所有していた期間にあり、所有期間が5年以下の場合には短期、6年以上の場合には長期として扱われます。
前者の場合の税率が15パーセント(住民税は5パーセント)であるのに対し、後者の場合は30パーセント(住民税は10パーセント)と二倍の差がありますので、両者のどちらに該当するかは非常に大きな違いであると言えます。
マンションの売却損益の考え方について
マンションの売却時に税金が発生するのは、売却に伴って利益が発生した場合です。《参考リンク … マンション売却の心得 … マンションの売却》
売却損益の計算にあたっては、売却価額から取得価額と売却費用を控除して計算することとされており、その結果がプラスであれば利益、マイナスであれば損失が生じることになります。結果的に売却損が発生する場合には、譲渡所得税やそれにかかる住民税は発生しません。
もっとも、売却損益は、単に購入金額と売却金額だけを比較すれば良いというものではなく、それ以外にも複数の要素を考慮して取得価額と売却価額を導き出す必要があります。そこで、それぞれの項目の内訳について、より詳しく見ていくことにしましょう。
取得価額について
マンションの取得価額は、購入金額から減価償却額や購入費用を控除することで計算します。マンションのうち建物部分は、年を追うごとに価値が減っていくことから、所定の定率法を用いて減価することが必要です。建物の造りによって償却年数は異なってきますが、大抵のマンションは鉄筋コンクリート造りであるはずですので、その場合は47年間が償却年数となります。
一方、土地については年数が経っても価値が減ることはありませんので、購入金額のうちの土地部分については減価償却は不要であるとされています。また、購入時に支払った不動産業者への仲介手数料や、契約書に貼付した印紙代などは購入費用に含めることが可能です。
それ以外にも登記に際しての登録免許税や登記手続きを司法書士に行ってもらった場合の手数料なども購入費用にすることができます。その他にも、意外なところでは、マンション購入時に支払ったオプション費用やリフォーム費用なども購入費用となりますが、これらは建物と同様に減価償却して計算する必要がある点に注意が必要です。
そのため、取得価額は、実際の購入金額と大きく異なってくることも珍しくありません。
売却価額について

マンションの売却価額は、概ね実際にマンションを売った金額となります。もっとも、売却に際しては、最初に不動産業者が提示する査定額を参考にしながら売出し価額を決めることになるのですが、その金額が最終的な売却価額となることは、よほどの人気物件でない限りは稀なことです。
購入希望者から値引きの交渉が入ったり、希望する金額では買い手が付かずに値下げを迫られたりすることが多いため、実際の売却金額がもともと希望していた金額よりも安くなることは珍しくありません。
売却費用について
マンション売却にあたっては不動産業者に仲介を依頼することが通常であり、その手数料は一般的には売却金額の3パーセントに6万円を加えた額とされています。例えば、3,000万円でマンションが売れた場合には、手数料は96万円になりますので、これを売却価額から控除できるというのは税金面ではかなり大きいと言えるでしょう。
また、それ以外にもマンションを売却するために、室内をリフォームしたことで発生した費用や売買契約書に貼付する印紙税なども費用として計上することが可能です。
様々な特例措置について

以上で見てきたような複雑な仕組みを元に、売却損益を計算した結果、売却益が出る場合には譲渡所得税などを納めなければならないわけですが、一定の場合に利用することができる特例措置が用意されていますので、それらを使うことができれば税金が免除されるケースは少なくありません。
代表的な特例措置としては、3,000万円の特例控除というものがあり、これはマイホームを売ったときの譲渡所得から3,000万円を控除することができるというものです。言い換えると、譲渡益が3,000万円までは税金が発生しないということであり、ほとんどのケースではそこまで多くの利益は発生しないことから、この特例を利用することで税金の負担を回避することが可能です。
ただし、この特例を利用する場合の注意点として、特例を利用してから一定期間の間は住宅ローン控除を利用することができなくなるということがあります。そのため、例えば住居を買い替えるためにマンションを売却するような場合に、新たな住居の購入にあたって住宅ローン控除の利用を予定しているということであれば、特例は利用しない方が良いかもしれません。
そのような場合、特例を利用することによって得られる節税メリットと、住宅ローン控除によって還付される税額のトータル金額を比較することによって、どちらを優先するのが得かを検討する必要があります。
確定申告について
マンション売却にあたって売却益が出た場合には、確定申告を行う必要があります。サラリーマンのように確定申告に馴染みがない人にとっては、慣れない作業になりますので、十分に準備して臨むようにしましょう。申告時期は毎年2月中旬から3月中旬となっており、売却益を得た翌年に申告することが必要です。
そのため、例えば1月や2月に売却した場合の申告時期は1年以上先になりますので、資料を無くしたり金額を忘れたりしないよう、しっかりと記録を残しておくことが重要です。